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T.S.

次世代を代表する再開発プロジェクトによって蘇ったハンブルクの「ハーフェンシティ」


ドイツでは、東西を分断していた壁の崩壊以降、国内各地で大きな都市開発プロジェクトが進められてきました。90年代に行われたベルリン・ポツダム広場の再開発は、その代表的なものとして当時世界中の注目を集めました。そして現在、21世紀を代表する都市開発計画として関心を向けられているのが、ハンブルクのハーフェンシティです。このプロジェクトは、2001年の開始から20年30年という長いスパンでエルベ川沿いにある157ヘクタールもの巨大なエリアを少しずつ刷新していくというものです。今回は、このハンブルク・ハーフェンシティの再開発プロジェクトについて紹介していきたいと思います。

ハンブルクと言えば、ハンザ同盟の中心都市として知っている方もいらっしゃるでしょう。ここは、中世の時代から北ドイツ、さらにはバルト海沿岸地域の貿易の拠点として大きな役割を担ってきました。19世紀になると、大西洋航路を介した貿易によって、街は最盛期を迎えることになります。その際に大きな役割を果たしたのが、今回の都市開発プロジェクトが行われているエルベ川沿いの港湾地区でした。

しかし、コンテナ船の登場によって、こうした状況は一変してしまいます。それまでの船舶よりも巨大になったことで、下流側にあるエルベ・トンネルを通過できないなどの理由から、この港湾地区は徐々にその役割を果たせないようになっていったのでした。長らくこうした状態が続いていましたが、90年代に入ると、ようやくこの遊休化している地域を蘇らせようという議論が起こってきたのでした。そして、1997年には市議会でハーフェンシティの再開発プロジェクトが承認され、マスタープランが作成されていきました。

このマスタープランでは、エルベ川の沿岸157ヘクタールのエリアにおいて、14000人の居住者、5500戸の集合住宅、3000室のホテル、そして、サービス業を主体に45000人の雇用を創出するというものでした。そこには10000人の学生や50000人の観光・訪問客もさらに考慮されており、まさに欧州最大規模の都市再開発計画と言えるでしょう。

実際のプロジェクトの内容を見てみると、エルベ川に面するという立地を活かした水との距離が近い街づくりが1つの特徴となっています。ハーフェンシティの中には、芝生やウッドデッキが広がるマルコ・ポーロ・テラスや、古代ローマの円形劇場を思わせるマゼラン・テラスといったように、様々なかたちで水辺空間が創出されており、地区内の10.5㎞の沿岸が誰もが利用できる公共スペースとなっています。陸地を見ても、公園等の一般に開かれたオープンスペースが28ヘクタールという全体の25%もの割合を占めており、街の至るところで水や風の感じられる快適でゆとりのある街づくりが行われているのです。

エルベ川の沿岸の再開発プロジェクトにおいて重要な課題として挙がっていたのが洪水対策でした。ここのエルベ川の干満差はおよそ3.5mもあり、実際にハンブルクの街は過去に何度も浸水被害を受けてきました。こうしたことから、ハーフェンシティの大部分は、海抜7.5~9mに嵩上げされ、その上に建物や道路が建設されています。一方で、上述したマルコ・ポーロ・テラスなどを含めたプロムナードは、海抜4.5mに設けられており、1年の内に何度か浸水してしまうようですが、通常時に水との距離が近い水辺空間ということが重視されています。地区内では、陸橋が度々見かけられますが、これも万が一道路が浸水した場合でも人々の移動経路として利用できるように考えられています。

ドイツは環境大国と言われるように、国を挙げて環境対策が進められています。このハンブルクの再開発プロジェクトにおいても、「持続可能な街づくり」が最重要テーマとなっています。地区内では太陽熱発電や地熱エネルギー、燃料電池、バイオメタン燃料電池、木質バイオマス燃料器など多様なかたちの再生可能エネルギーを導入することによって、環境に優しい街づくりを行っていくことはもちろん、時代の変化に柔軟に対応できる電熱供給計画がなされています。さらに、2007年に「ハーフェンシティ・エコラベル」と名付けられた認証システムを新設し、建物の建設・運営・解体までの一連の過程での二酸化炭素消費量の削減や、再生可能エネルギーの利用を促進し、建築物を環境面で格付けできるようにしています。ハーフェンシティは、すでに完成しているエリアもあれば、まだ未開発のエリアもあり、街が出来上がっていく過程を見ることができる現在進行中のプロジェクトです。こうしたドイツ、さらには21世紀を表現するようなハンブルク港湾の再開発の様子を一度間近でご覧になってみてはいかがでしょうか。

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