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(ベルリンの建築)らせん階段は一見の価値があるエーリッヒ・メンデルゾーンのドイツ金属労働者組合本部

最終更新: 2019年12月22日


20世紀前半における建築様式の主流は、ル・コルビュジエやワルター・グロピウスの作品を代表とする近代建築でした。しかし、その同時代には合理的・機能的な理念や造形を持つモダニズムとは対照的な建築様式もありました。それが、曲線を積極的に用いるような自由な造形の表現主義建築でした。そうした曲線的な造形ということもあり、表現主義建築は計画案だけで実現することがなかったものや、アインシュタイン塔のように周囲に建物などが少ない街の郊外に建てられるものが多くありました。しかし、その中で様々な制約がある都市の中に建てられたものがあります。それが、ベルリンにあるエーリッヒ・メンデルゾーンのドイツ金属労働者組合本部です。今回は、この建築について詳しく見ていきましょう。

そもそも建築における表現主義というのは、個人の内から湧き出てくるものを形として自由に表すことに重きを置くことが考えられています。この考え方は、すでに表現主義が1つの潮流として現れる前の1914年にありました。この年に、ドイツ工作連盟において製品の規格化を進めるムテジウスと、個人の表現を重視するヴァン・デ・ヴェルデを筆頭として連盟を2つに分ける「規格化論争」が起こりました。この連盟には、後のモダニズムを引っ張っていくワルター・グロピウスや 表現主義のブルーノ・タウトも所属していました。このような流れなどを通して、次第に2つの思想が展開していったのでした。

さて、今回紹介するドイツ金属労働者組合本部を設計したエーリッヒ・メンデルゾーンですが、彼の建築、そして表現主義建築の代表作としては、アインシュタイン塔がより知られているでしょう。このアインシュタイン塔の場合は、敷地が街の外れにあり、周囲に他の建物がなかったことから、表現主義の特徴である自由な形態的な操作が簡単に行える環境にありました。

しかし、ドイツ金属労働者組合本部の敷地はベルリン市内にあり、周囲の建物や街の景観に配慮しながら計画する必要があったことはもちろん、オフィスという用途のため建物の機能性も重視することも求められました。表現主義建築は、その曲線的で自由な形態デザインであることから、周りとの調和や建物の合理性を取りにくいですが、メンデルスゾーンはこの建築で、都市の中という様々な制約が課せられる中でも、表現主義建築を現実的なかたちで実現させることができることを示したことに、この建築の1つの価値があるのではないかと思います。

こうしたことから、外観を見てみると、そのデザインはごく一般的なものとなっています。唯一、特徴的なデザインとなっている部分は、曲線を描く正面玄関のあるファサードですが、この曲線も非常に緩やかなカーブとなっています。しかし、その一方で、このファサード面の上部には小さく半円柱型に飛び出している部分があり、中からこの部分に立つと、建物から切り離されたような感覚で周囲の景色を見張らせるそうです。

建物の中に入ってみると、玄関ホールがあり、その奥にはこの建築の一番の見所でもあるらせん階段が見えます。このらせん階段の曲線のある形態や大きな吹き抜け空間、そして中央に見えるガラスと金色の鉄柱からなる照明器具は、この階段やその周囲に優雅な印象をつくりだすとともに、表現主義の特徴の1つであるガラスや鉄など当時の新しい素材を活かす方法で、この空間を非常に象徴的な場にしています。このように、メンデルスゾーンはこの建築の随所に表現主義のかたちを取り入れることで、現実的な表現主義建築の在り方を示したのでした。玄関ホールでは、この建築についての展示がされていたり、らせん階段も実際に上り下りできますので、ベルリンに訪れた際は是非こちらにも足を運んでみてはいかがでしょうか。


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