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T. S.

(ベルリンの建築)ベルリンのユダヤ博物館でその歴史を建築でも体験!

更新日:2019年12月22日


ユダヤ博物館はニューヨークやロンドンをはじめとして、アメリカやヨーロッパ各地にあります。その中でも今回取り上げるベルリンのユダヤ博物館は、ドイツの歴史的な背景から展示内容において特別な意味を含んでいます。それに加えて、2001年に新たにオープンした建築家ダニエル・リベスキンドによる建物によって、建築そして空間自体でも多くのことを感じ体験できる博物館となりました。今回は、そのベルリンにあるユダヤ博物館について詳しく見ていきましょう。

まず、新たにオープンした建物を手掛けた建築家ダニエル・リベスキンドについてですが、ポーランド出身の彼の両親はホロコーストの生存者でした。つまり、ユダヤ系建築家によってまさにこの博物館の新館はデザインされています。そもそも新館は1989年に行われたコンペによって計画が進められていきました。そこで選ばれたリベスキンドは、ギザギザに折れ曲がるプランで、しかも窓も何かの破片が飛び散ったような不規則な形と配置しているという非常に挑戦的なデザインをしています。そこには、新館を上から見るとダビデの星が引き裂かれたような建物の形態となっているなど、戦争でユダヤ人が歩んだ歴史を表現・意味するような意図が込められています。

このユダヤ博物館はリベスキンドによる新館だけでなく、隣接する1735年に建てられた旧裁判所の建物も含まれており、博物館の出入り口はこの建物にあります。新館と旧裁判所の建物は地下でつながっており、新館の地下へ入ると、3つの軸と対峙することになります。

その軸はそれぞれ意味を含んでおり、1つが「ホロコーストの塔」へ向かう「死」の軸、もう1つが建物の外へとつながる「亡命」「移住」の軸、そして最後が建物内部の長い階段へと導く「存続」の軸となっています。これらの軸はまさに戦争を通してユダヤ人が歩んできた過去であり、それぞれの軸ではその意味に沿った展示がされていることはもちろん、身体的にも体験できるような空間となっています。

3つの軸にはそれぞれ終わりがあり、そうした場所も深く意味付けされています。まず、1つ目の「死」の軸の終わりには「ホロコーストの塔」があり、ホロコーストで人々の行動が管理されていたように塔に入る扉の前では人数制限が行われています。塔の中に入ってみると、塔の上部にわずかに開けられた隙間から入ってくる光しかなく、その暗闇に包まれた空間はホロコーストでの人々の絶望を表し、その中でわずかな希望の光があるという場所となっています。

「亡命」「移住」の軸を進んでいくと屋外へと出ます。気持ちのいい広場になっているかと思いきや、そこには高さ6mにもなるコンクリート柱が49本も立ち並んでおり、それらは密に配置されていることから先が見えません。また、地面も傾斜してつくられています。このようにして、ここでは亡命・移住先での先の見えない不安な心境が表現されています。同時に、コンクリートの柱の上にはオリーブとグミの木が植えられており、不安に満ち溢れた中でも平和と希望のある道であったことが伺い知れます。

そして、最後の「存続」の軸は長い階段へとつながり、その先にある展示室で、過去そして未来へと続いていくユダヤ人の歴史が見られるようになっています。リベスキンドの建築によって、ただ展示を鑑賞するだけでなく、身体でも感じられるような博物館となっています。展示内容はもちろんですが、建築や空間としても非常に体験してみる価値のある場所となっています。その内容、建築とともにドイツ・ベルリンでしか味わえないものですので、ベルリンを訪れた際は是非足を運んでみてはいかがでしょうか。

Jewish Museum Berlin

アドレス:Lindenstraße 9-14, 10969 Berlin

入場料: 8ユーロ

開館時間:10:00 - 20:00 (一部の祝祭日のみ休館)

ベルリンの建築はこちらの記事でも紹介しています。


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