「ベルリンのモダニズム集合住宅群」 は2008年にユネスコ世界遺産に登録されました。それは、1920年代を中心にベルリンで建てられた6つの集合住宅からなり、その中にはワルター・グロピウスやハンス・シャロウンといったドイツを代表する建築家によって建てられたものもありますが、6つの集合住宅の中で最も見ていただきたいのがブルーノ・タウトの手掛けたベルリン南部にある馬蹄形ジードルンクです。今回は、この馬蹄形ジードルンクについて詳しく見ていきましょう。
今回の「ベルリンのモダニズム集合住宅群」をはじめとして、20世紀初頭には多くの集合住宅が建てられていきました。その背景には、19世紀末から急激に都市人口が増加したことがありました。これはベルリンだけに限らず、ヨーロッパにおける多くの大都市で見られました。こうした都市部の人口の急激な増加によって、住宅不足そして都市の一部がスラム化するなどの多くの都市問題が顕著になっていきました。第一次世界大戦に敗戦したドイツでは、終戦後になって公的な要請による集合住宅の建設が次々と進められていきました。ベルリンでは住宅供給公社・ゲハーグ(GEHAG)によってジードルンクの計画が進められ、それを指揮したのがブルーノ・タウトでありました。
ブルーノ・タウトはユネスコ世界遺産に登録された6つの集合住宅の内、4つの建物の設計を手掛けていますが、その中でも特徴的なのが今回の馬蹄形ジードルンクです。ちなみに、ジードルンク(Siedlung)とはドイツ語で「集落」を意味し、建築の中では集合住宅を表します。ベルリンの中心部からは南に少し離れたブリッツにあるこのジードルンクは1925~1930年にかけて建設されました。
馬蹄形ジードルンクと言われる所以は、このジードルンクの中心の建物がまさに馬蹄の形をしているからです。ブルーノ・タウトは、計画地にすでにあった池を中心にして、それを囲むように馬蹄形の中心の3階建ての建物を配置しました。さらには、ここから放射状にタウンハウスも建設され、このジードルンクは1556戸の集合住宅、407戸のタウンハウスという大規模なものとなっています。
池を取り囲む馬蹄形の住棟の形態や放射状のタウンハウスの配置によって、このジードルンクは池を中心とした一体感が全体に感じられるようになっています。池へ向かう緩やかな傾斜も、人々が自然と池の方へ意識がいくように働きかけています。そして、池のある中央の広場は一般にも開放されており、この集合住宅の住人だけでなく、周囲の人々も利用、そして交流できるようになっています。よく見てみると、馬蹄形の住棟は、緩やかに傾斜している敷地に従って段差が付けられており、それによって大きな建物を分割された小さな建物に見せています。それは、池の広場における圧迫感を抑え、池の周囲の空間の居心地の良さを生み出しています。
「すべての建築に色彩を」というブルーノ・タウトの言葉をご存知の方もいらっしゃると思います。ブルーノ・タウトの建築にはこの言葉通り、あらゆる部分に色彩が用いられています。1920年代と言えば、ワルター・グロピウスといった幾何学的な形態の白いモダニズム建築が主流でしたが、ブルーノ・タウトは今回のように有機的な形態と色彩を建築に与えることで、人間や自然に寄り添った建築を目指したのでした。この馬蹄形ジードルンクでもタウトはこの建築思想を実行しています。馬蹄形の形態も特徴的ですが、それと同時に色彩が積極的に建築のあらゆる部分に使われていることにも注目してみて下さい。
モダニズム建築についてはこちらの記事でも紹介しています。
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